延命治療は具体的に何をするのか【リビングウィルの書き方例も解説】

延命治療は具体的に何をするのか【リビングウィルの書き方例も解説】

リビングウィルって具体的にどんなことを書いたらいいんだろう

延命治療って結局どんなことをするのかわからない。

あなた自身の死の在り方について考える「リビングウィル」や「延命治療」は終活において非常に重要な考え方となっています。

しかしながら元気なうちは自分の最期の状態や、延命治療は具体的に何をするのか想像が難しいかと思います。

そこで今回は終活とリビングウィルの関係や、延命治療は具体的に何をするのかまとめていきます。

この記事のまとめ

➣延命治療とは患者の生命を延長する目的に行う行為である
➢具体的には心臓マッサージや気管挿管などの行為を指す
➣リビングウィルは自分の医療に対する意思を明確にするものである。

この記事の執筆者

Dr.よだ:
2016年に医師免許取得。また浄土真宗西本願寺派の僧侶として教師資格も取得。現在は内科専門医として地域医療や緩和ケアを中心に勤務。地域社会と高齢化社会、生と死に向き合いながら医師として、また僧侶として活動中。終活や人生の豊かさについて考えています。

終活とは何か?

終活の意味と背景

終活とは、人生の最後を迎えるための様々な準備や活動を指します。

具体的には、遺言の作成、葬儀の計画、エンディングノートの記述などを通して死後の手続きや家族への負担軽減を目的として行われることが多いです。
近年、終活という言葉が広まり、多くの人々が自分の死を意識し、その準備を始めています。

この背景には、自分の死を迎える際の不安や、家族や遺族に迷惑をかけたくないという思いがあります。
また、自分の意志をしっかりと伝えることで、死後のトラブルや家族間の争いを避けることも終活の目的として挙げられます。

終活は、自分の人生を振り返り、残された時間をどのように過ごすかを考える機会ともなっています。

高齢化社会と終活の関係

日本は急速に高齢化が進む社会となっており、2020年時点で65歳以上の高齢者の割合が28%を超えると言われています。
この高齢化が進む中で、自分の死や老後の生活をどのように迎えるか、という問題がより一層重要となってきました。

高齢化社会では、一人ひとりが長生きするため自分自身の健康や生活の質、そして死に対する考え方が変わりつつあります。

終活はこのような社会背景の中で、あなた自身の人生の終わり方を自分らしく迎えるための手段として注目されています。
また高齢者が増えることで、家族構成や家族間の関係も変化しており、終活を通じて家族や親しい人々とのコミュニケーションを深めることも求められています。

あなたの死を前提とした活動であるため、一見ネガティブに捉えられがちですが、実際には自分自身の人生をより良くするためのポジティブな活動と言えるでしょう。

延命治療との向き合い方

延命治療の現状と課題

延命治療とは、患者の生命を延長することを目的とした治療のことを指します。
これには、人工呼吸器や輸液、栄養補給などの治療が含まれます。
近年、医療技術の進歩により、多くの病気や状態での延命治療が可能となっています。

しかし、延命治療の現状には多くの課題が存在します。
一つは、治療を受けることで生命は延長されるものの、生活の質(QOL)が必ずしも向上しないという点です。

また延命治療を受けることで患者や家族が経済的な負担を感じることも少なくありません。
さらに延命治療の是非について、患者や家族、医師間での意見や価値観の違いが生じることもあります。

このような課題もあり、延命治療を受けるかどうかの判断は、患者本人や家族にとって非常に難しい選択となっています。
そのためリビングウィルやACP(アドバンス・ケア・プランニング)など、自分の意志を明確に伝える手段として終活を始めることが有効です。

延命治療とは具体的に何?

医療技術の進歩により重篤な状態や末期の患者でも、生命を延長することが可能となっています。

例えば病気で息が止まった場合は気管挿管を行い人工呼吸を行ったり、心臓が止まった場合は心臓マッサージを行うことで命をつなぐことはできます。
また、ご飯が食べられなくなったら胃瘻の作成をすることもあるでしょう。

しかしだからと言って心臓が止まった病気や息が止まった病気が治るわけではないため、「延命治療」といいます。

延命治療を行うか、自然な形で最期を迎えたいのか、あなた自身の意見をしっかり伝えておくといいでしょう。

延命治療の具体例

〇心停止時の心臓マッサージ

〇呼吸停止時の気管挿管

〇食事摂取困難時の胃瘻作成

〇点滴が確保できなくなった際の中心静脈栄養
(※中心静脈栄養:心臓近くの太い静脈に管を入れて濃い栄養や薬剤を投与する方法)

延命治療を行わないと一言で言っても、「胃瘻は作ってほしくないけど、心臓マッサージはしてほしい」という具体的な希望も可能です。

リビングウィルとは?

リビングウィルの定義と目的

リビングウィルとは、医療に関する自分の意志を文書にしたものを指します。
具体的には末期の病気や重篤な障害を持つ際に、延命治療などを受けるか、または受けないかという意思を明記した文書です。

リビングウィルは、自分が意識を失ったり、意思を伝えることができなくなった際に、医師や家族がその意志を尊重して医療を提供するための指針となります。

リビングウィルの主な目的は、自分の意志を明確に伝えることで、不必要な延命治療を避けることや、自分の望む医療を受けることができるようにすることです。
またリビングウィルを作成することで、しっかり自分のことを話し合い、家族や医師とのコミュニケーションが円滑になり、患者の意志が尊重されることが期待されます。

リビングウィルの作成の意義

リビングウィルを作成する意義は、自分の意志を明確にし他者に伝えることで、自分らしい最期を迎えることができる点にあります。

医療技術の進歩により、多くの延命治療が可能となっていますが、それが必ずしも患者のQOL(生活の質)を向上させるわけではありません。
リビングウィルを持つことで、自分の意志に基づいた医療を受けることができるのです。

またリビングウィルは家族や医師にとっても大きな意義を持っています。
あなたが急に意思疎通が取れなくなったとしても、家族はリビングウィルをもとにあなたの意志を尊重した医療判断を下すことができ、医師も患者の意志を明確に知ることで、適切な医療を提供することができます。

リビングウィルは、患者、家族、医師の間のコミュニケーションを促進し、信頼関係を築くための重要なツールとなっています。

尊厳死と安楽死の違い

尊厳死の定義

尊厳死とは、自然な死を迎えることを意味します。
具体的には、人生の最終段階において、延命治療や積極的な治療を行わずに自然な経過で最期を迎えることを指します。

延命治療を受けることで生命は延長されるかもしれませんが、それが必ずしも患者のQOLを向上させるわけではありません。
つまり尊厳死は、自分の人生の終わり方を自分らしく、尊厳を持って迎えることを重視する考え方です。

安楽死の種類とその特徴

安楽死とは、病気や障害による苦痛を和らげるため、またはその苦痛を終わらせるために、意図的に生命を終わらせる行為を指します。

安楽死には大きく分けて2つの種類があります。一つは「能動的安楽死」で、医師が薬物などを用いて患者の生命を終わらせるものです。
もう一つは「受動的安楽死」で、延命治療の中止や拒否により、自然な死を迎えることを選ぶものです。

安楽死の特徴としては、患者の苦痛を和らげることを目的としている点が挙げられます。
しかし、生命を終わらせるという重大な決断を伴うため、患者や家族、医師間でのコミュニケーションが非常に重要となります。

尊厳死と安楽死の法的問題点

尊厳死と安楽死の違いは、自然な死を迎えるか、意図的に生命を終わらせるかという点にあります。

この違いから法的な問題点が生じています。
日本では、能動的安楽死は違法とされています。
一方、受動的安楽死については、患者の意志を尊重する観点から、一定の条件下で認められる場合があります。

尊厳死に関しては延命治療の中止や拒否という形での自然な死を迎えるため、法的な問題は少ないとされています。
しかし患者の意志を明確にするためのリビングウィルの法的効力や、医師の判断基準など、まだ解決すべき課題が多く存在しています。

リビングウィルの具体的な書き方

延命治療は具体的に何をするのか【リビングウィルの書き方例も解説】

この例文では、延命治療の希望、痛みを和らげる治療の希望、看取りの場所の希望を明記しています。

リビングウィルは、自分の意志を具体的に伝えるためのものなので、具体的な内容を記載することが重要です。
また日付や氏名を明記することで、文書の信頼性を高めることができますが法的拘束力はありません。

リビングウィルの有効性を高めるためのポイント

明確な表現を使用する

家族や医師との意思の確認

定期的な見直し

専門家のアドバイスを受ける

リビングウィルは、自分の意志を明確に伝えるためのものです。そのため曖昧な表現を避け、具体的な内容を記載することが重要です。

リビングウィルを作成した後に家族や主治医と内容を共有することで、意志の確認や理解を深めることができます。

また自分の健康状態や価値観は変わる可能性があります。そのため定期的にリビングウィルを見直し、あなたがまだ意見が変わってないかどうか確認しましょう。

最後にリビングウィルの作成に関して、医師などの専門家やカウンセラーのアドバイスを受けることで、より適切な内容を記載することができます。

リビングウィルの注意点

リビングウィルの見直しの重要性

リビングウィルは、自分の医療に関する意志を文書化したものですが、人の価値観や考え方は時間とともに変わることがあります。

また、医療技術の進歩や社会の変化により、新たな選択肢や情報が出てくることも考えられます。
リビングウィルを一度作成したからといって、ずっと意見を固定する必要はありません。

特に病気の進行や配偶者がなくなった場合など、大きな健康上の変化や家族構成の変動、新たな医療情報の取得などがあった場合は、リビングウィルの内容を再評価することが求められます。
この見直しを定期的に行うことで、リビングウィルが自分の意志を表しているかを確認し、必要に応じて更新することができます。

家族とのコミュニケーションの大切さ

リビングウィルは自分の意志を文書化するだけでなく、それを周囲の人々に伝えるためのツールでもあります。
特に家族や医療代理人とのコミュニケーションは、リビングウィルの有効性を高めるために不可欠です。

家族や代理人とリビングウィルの内容を共有することで、入院など緊急の医療状況が発生した際に、迅速かつ適切に自分の意志に基づいた医療判断を下すことが可能となります。
またリビングウィルの内容について家族や代理人と事前に話し合うことで、意思の確認や理解を深めることができます。

私自身高齢の方が急に入院された場合には、必ずと言っていいほど延命治療を行うかどうかの確認は行っています。

残される人達のためのリビングウィル

リビングウィルが遺族にもたらすメリット

リビングウィルは、あなた自身の医療に関する意志を明確にするものですが、あなたが亡くなった後の遺族にとっても多くのメリットがあります。

まずリビングウィルがあることで、本人が望む医療を受けることができるため、遺族はその意志を尊重して行動することができます。
これにより遺族が後悔や自責の念に駆られることを防ぐことができます。

またリビングウィルをもとにした判断は、家族間の争いや意見の対立を少なくする可能性があります。
特に重篤な状態となり、本人が意思疎通取れなくなった場合は、家族にとって非常に難しい判断を強いることが多いです。

リビングウィルがあることで、そのような重要な判断を本人の意志に基づいて行うことができるため、家族間のコミュニケーションが円滑になることもあります。

まとめ

今回の記事では終活におけるリビングウィルの考え方、延命治療は具体的にどのように考えるかをまとめました。

あなた自身の価値観や考え方をあらかじめ共有しておくと、あなた自身の考えの整理になるだけでなく、急な不幸があった場合にも家族や残された人たちの負担を減らすことができます。

終活の一部として、一度立ち止まってあなた自身の最期の迎え方を考えてみましょう。

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